ハンニバル・レクター・シリーズというのは、『羊たちの沈黙』(1991年、ジョナサン・デミ監督)のほか、いくつあるのだろう、と数えてみたことがある。しかも、演者が『羊たちの沈黙』のアンソニー・ホプキンスとなると、さらにしぼられてくる。
既述にくわえて『ハンニバル』『レッド・ドラゴン』(2002年、ブラット・ラトナー監督)とあり、このうちの前者につづいて後者をこのほど見た。変わっているのは、前2作とちがってレクターと対決するのが、おなじFBI捜査官でも男である点だ。
こんどのエドワード・ノートンは、妻も子もある家庭人だ。
さらに、今回レクターは狂言回し的役割に徹しており、直接エドワード・ノートンが相手するのは、「噛みつき魔」のレイフ・ファインズで、「人喰い魔」レクターとはいい勝負だ(笑)。というより、エドワードはレクターに助けられてる。とにかく今度の犯人は気持悪い奴で、タイトルになってる画像のイメージどおり、不気味な入れ墨を背中一面に彫り込んだ「おぞましい存在」だ。
設定では「自身の障害や生い立ちからくるトラウマに悩まされている」ということだが、顔の傷を入れたら確かに障害者的一面は見られる。それが盲の女性とからむことから、再生の兆しかとも思える一瞬もあるが、ハンニバルものであるからには、その救いはない。ひたすら自滅への道を邁進し、復讐心をもって、ついには主人公一家へと牙を剥いていく。
恐ろしい映画だ。こんども後味は良くない。