松本清張の小説で『神と野獣の日』というのを読んだのはいつの昔だったろう。簡単にいえば、間違って発射された水爆が東京に向かって、あと何十分かのちに到達、それを逃れるため自暴自棄にもなり、人々が「神か野獣」に到達する修羅を描いたパニック。清張唯一のSFといわれている。
しかし小説は現実にはなり得なかった。もちろん水爆戦争など起きてはいないし、北の為政者に良識がある限り、今後も東京や他の日本の諸都市が核戦争禍のまっただ中に見舞われることなどないだろう。
そういえばいつだったか、日本を中韓と戦わすため米帝が仕組んだこととして、裏日本のどこかを限定核か何かで攻撃するという想定があった記憶があるが、いまの米中熱々ムードじゃ無理だろう。
そういう仮定でもなく、別の形で「人類最期の日」を迎えた時でも、すくなくとも日本の何パーセントか何十パーセントかの人々は慌てず騒がず、神にも野獣にもならなかったということをいってる。
3・11のあとのことだ。
東電福島原発事故の際の現地の対応——また、災厄は東京にも押し寄せると思われた時の衝撃と不安には、妊婦であるか子を持つ母であるか否かを問わず、めいめいそれぞれの受け取り方、温度差の違いはあるにせよ、西へ向かう新幹線が疎開客で混んでたという現実を見るにつけ、未曾有の深刻な事態だったことは否めない。
しかし、それでも野獣にはならなかった。人間いかなる事態に於いても、一定の良心と良識にもとづく心の持ち主、野獣でもケモノでもないということなのだ。
そこである映画を思い出した。
ネットには親切な人がたくさんいて、これもその方が発掘した「日曜洋画劇場放映リスト」に載ってた。1968年3月31日。あの「サイナラおじさん」淀川長治さんの解説付きで放映されてた『渚にて』だ。
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名番組《日曜洋画劇場》放送作品全リスト
1960年公開。“on the beach” この原題のひびきもいいよね!
ネヴィル・シュート原作、ジョン・バクストン脚本、スタンリー・クレイマー製作・監督。主演、グレゴリー・ペック。共演、エヴァ・ガードナー、フレッド・アステア。
ヤフーで検索したら《「日曜洋画劇場」の思い出って何がありますか?》の質問。答は見事『渚にて』だった(笑)。おおきいカット写真が示すように、美しくて、静かで、きれいな幕切れだったよねー!
ちなみに、淀川長治さんの解説集もDVD-BOXで出てるようだが、関心のある方、ご希望の方はご自分でご検索ください。
m(_ _)m