見終わった後の余韻が、まだ収まらない。
これは絶体見るべき映画だよ!
多くは書かない。
イーストウッドが演じる主人公は、その昔は朝鮮戦争にも行って勲章をもらい、老妻を亡くしたいまは一人暮らしの、黒人やアジア人への偏見も隠さない頑固一徹だが、わがままで、早くいえば「イヤなアメリカ野郎」だ。
隣りに東洋人が居着いたのも気に入らず、「俺の庭に立ち入るな」「敷地に一歩でもはいったら撃ち殺す」と威嚇、実際にライフルをぶっ放しかねないアブナイ親父だ。
そんなくそジジィでさえやさしい面はあって、ある日自慢の愛車、グラン・トリノを盗みにはいったタオという少年と知り合い、気心を通わせるうちに、というお話。よくあるパターンだが、驚愕のラストが待ってる。
関わりたくない悪と、已むに已まれず関わることになった結果——と、ほんとにこの手の映画にはよくあるパターンで、マカロニ・ウェスタンで、スクリーンの中とはいえ数限りなく悪党どもを退治してきたイーストウッドが、こんども現実世界を舞台にして、許されぬ悪には単身立ち向かい……
成り行きはワンパターンでも結果は胸のすくことに違いない。血を吐くような病にも冒され、対決におもむく孤高の保安官といったところは『真昼の決闘』だが、硝煙渦巻くラストの銃撃戦は誰もが予想することだろう。
が、しかし……
クリント・イーストウッドが自分の映画人生に自分で幕を引いた、見事に! 心に染みわたる名エンディングと共に、「これぞ男の中の男の映画」と唸らされもするはずだ。
ああ、俺もかっこ良く生きてぇなあ。そして……
かっこ良く死にてぇ!
(下画像:アジア人に囲まれる主人公。「俺はこんな奴らは嫌いなんだ!」と心の声)