と、いまさら書くことでもないだろうが、いつもの伝でアマゾン・レビューを読んでて書きたくなった。いや、他のレビューが気に入らないということではない。レビューに感心して俺も、ということでもない。
レビューの「映画の中身はともかく、ソフトが」の話に黙ってられなくなったのだ。
そうだ、そうだったと思い出したのだ。
画質が液晶に合ってたか、合わなかったかは忘れたが、音は凄かったな。
最初にDVDを買って見たときは、確かソニーのハイビジョンだったと思う。
じつはウチにある『プライベート・ライアン』のDVD、人からプレゼントされたものなのだ。で、当時はそんなありがたいものなのに、「音も画質も良くない」と不満に思っていた。
ところがところが……
そんなことがあるのかと思うが、当時使ってたプレヤーとの相性が悪かったみたいで、パソコンにかけたら俄然映りが良くなって、それで相性と分かったわけなんだ。
それまではLDで見てたんだ。
で、いまはその環境にないが、当時はサラウンドスピーカーもいいのを持っていて、ラスト30分の戦車一両を加えたドイツ軍兵士との攻防戦なんか、戦車が近づく場面で部屋が地響きたててたもんな。
いやー、冗談に、「音の怖さと、内容の怖さに加え、となりから怒鳴り込まれるんじゃないか」で、「怖さのサラウンド」といってたもんだ(笑)。
いまはヘッドフォンで聴くだけだけど、いったんかけかけたものの、〈スピルバーグか〉(笑)、こないだ興奮した『宇宙戦争』だってスピルバーグだってのに、〈スピルバーグじゃあな〉(笑)
それでやめようと思った刹那に、オープニングが出て、〈おおっ! この音だよ、この音!〉そう思って、あとはそのまま視聴になだれ込んだ(笑)。
これ3時間の映画なんだよね(正確には2時間49分)。で、評判では最初の約30分と最後の約30分が取りざたされるが、すると真ん中の2時間はなんだったんだ、上げ底内容じゃないか、とか。
きょうはそれをじっくり確認した。
たしかに、冒頭オマハビーチ上陸の30分は凄かった。戦場の臨場感、むごたらしさが次々に「これでもか!」とばかり出てくる。それで戦闘は一段落して、銃後の家庭のなかで兄弟4人が出征している家がある、そのうち3人までが戦死した、この家には3通の戦死公報が届く、4通目を受け取らせてはダメだ、どこからかそれが洩れて厭戦気分になったら大変だ、と、その部分は映画ではあからさまに語られてないが(笑)、要はそういうことだろ。だからライアンを引きもどせと。
しかし、いままで共に戦った仲間を見捨てて還れない、しかも「いまは敵を迎え撃たねばならない重要な局面、あんたが俺ならどうするよ」とばかり、命令を伝えた大尉(トム・ハンクス)は返す言葉がない。
しかたなく、いっしょに連れて行った部下ともどもそこで戦うことに。
それがラスト30分間の攻防戦なのだ。
で、俺はこの30分間がめっちゃ好きなのだ。DVD買った当初、否、DVDのまえはLDだったから、LDのラスト30分を何度もくり返し見たくらいだ。
しかし、痛いんだよね、この30分が。といって戦争体験者に「実際はあんなもんじゃない」といわれりゃ「ぐう」の音も出ないが、しかし映画が表現できる効果を最大限駆使して再現した戦闘描写ははんぱじゃない。
やはり『プライベート・ライアン』は、生涯見たなかでの「ベスト10」に数えて迷うことは絶対にない映画だと断言できる。
スピルバーグが黒澤を信奉していることは有名だが、『プライベート・ライアン』でも黒澤作品へのオマージュが感じられる。俺が「ぴーん!」ときたのはこの場面だ。戦車を含む50人のドイツ兵を迎え撃つこの緊迫感あふれるシーンは、有名な『七人の侍』のクライマックス。野ぶせり(野武士)を村に引き入れ、地の利に乗じて殲滅するため故意に通過させるのだが、その野武士の通過を百姓と侍が虎視眈々隠れて見ているシーンとそっくりなのだ。