画像を見ていただきたい。
上右はフレッド・ジンネマン監督、西部劇の古典的名作といってよい〈ハイ・ヌーン〉=『真昼の決闘』だが、左は知らない人も多いのではないか。それこそ『駅馬車』『黄色いリボン』で有名な「西部劇の神様」を、「西部劇だけがジョン・フォードでない!」ことを鮮烈に見せつけた現代劇の名作だ。
炭鉱の町、英国ウエールズの人々の一見純朴だった心が、炭鉱のボタで汚されていく町並のように、心ない差別と偏見でみにくく変貌していくさまを、ヒューという少年の目で哀しくみつめた文芸映画ともいえる感動作だった。日曜洋画劇場放映作。
それまでジョン・フォードといえば『駅馬車』が通り相場で、インディアンを「何の疑いもなく大量虐殺して恥じないクソ監督」と思ってきた俺を、にわかに刮目させてくれたことでも重要作品であった。
ちなみに『真昼の決闘』が俺にとって好きな西部劇であるのは、決闘するのは白人同士でインディアンとの殺し合いが主でないからだ。そういう意味での西部劇として、『OK牧場の決闘』(1957年、ジョン・スタージェス監督)・『大いなる西部』(1958年、ウィリアム・ワイラー監督)・『リオ・ブラボー』(1959年、ハワード・ホークス監督)・『リバティ・バランスを射った男』(1962年、ジョン・フォード監督)のほか意識してなのか否か、マカロニ・ウェスタンではインディアンを敵視したストーリーは皆無に近かったように記憶する。
分岐点としては、ケビン・コスナーが主演・監督・製作の三役をこなした『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(1990年)が目安になろうか。あの映画の登場は衝撃だった。
ちなみに、白黒映画である。にもかかわらず、色彩豊かな映画と見まごうほどの情感にあふれている。右画像は、ちょっとした事故から歩けなくなったヒュー少年が、やさしい牧師の励ましで歩行訓練する場面だが、このシーンひとつとっても映画の文学性が理解できるだろう。
『わが谷は緑なりき』には吹替版も出てるのね。まちがえたレビューが混じっていて気づいたんだが、久米明の吹替も聞きたかったと、すこしく後悔している(笑)。値段もおなじくらいなので、吹替希望の人は気をつけてください。