「起きしな」か、まだ、頭が半分睡っている状態にてか、題名が何か思い出せない! ぼんやりしながらも出てこないのだ。しかたなく間接灯を点けて半身を起こし、それでようやくラックに並ぶなかから『ガラスの城』を読むことができた。
『ガラスの城』『天才画の女』……やはり清張小説のタイトルは凝り過ぎだ(笑)! それだけ憶えにくいもんな(笑)。
きのうは『彩り河』を読了した。
タイトルは夜の銀座、ネオンの光彩のきらびやかさに、その裏でうごめく実態の複雑怪異が潜む現実をイメージして、「さすが清張!」と唸らされる名タイトルだ。これが一巻まるまるだから濃い。濃すぎるのだ。
「銀座の夜」とかけたとき、当然「水商売の女」が連想されるが、『彩り河』ではそこに浮遊する男たち、政財界人のどす黒い実態こそがデフォルメされて描かれ、俺の印象としては「いつもの清張さんとはスタイルが違う」ように感じた。やはり晩年というか、後期の落ち着きなのかと思っちゃう。
そういう意味では、現代ものより時代小説にすれば良かったかも。『かげろう絵図』に見る清張の時代小説の斬新さは、時代小説を読み慣れてない俺が論ずるべきではないかも知れないが、単にチャンバラ時代小説ではなく、チャンバラのない時代小説、ふつうの庶民がその時代に生きている息吹きそのものが描かれているようなリアルさ、生き生きとした存在感で迫ってくるのだ。
すでに『乱灯江戸影絵』があるが、それにつづく、これは「松本清張作時代小説の金字塔!」と謳っていい(と、また勝手に謳ってしまったが)『天保図録』上下巻(という大部!)を注文したのであります(嬉)。
画像は[ウィキペディア『彩り河』]に掲載せられていた大画像。キャプションにいわく「夜を迎える銀座通り」。