「灯台の、根元は暗いよ」は寅さんのセリフだが……
「世界の終わり(か、終わりに至る過程)を描いた映画10選」で、これを忘れてた。
『アンドロメダ…』(ロバート・ワイズ監督、1971年製作)だ。
ロバート・ワイズといえば、あの『ウエスト・サイド物語』、『サウンド・オブ・ミュージック』、それからまた『砲艦サンパブロ』も撮っている、その人。その監督のSF大作だから期待できる。
ニューメキシコの小さな村に衛星が落下した。回収におもむいた米軍兵士は息を呑む。村の人々は全員息絶えていたのだ。何かの拍子に、苦痛にのたうち回ることもなく瞬間的に死を迎えたように、一人一人生活の一場面のなかに。そのなかで一人の老人と一人の赤ん坊だけはすやすやと眠りのなかで息をしていた。いったい何が起こったのか。アンドロメダと呼ばれる未知の生命体は何か、その謎の解明に見る者をも引きずり込んで物語は静かに進行していく。
そもそも映画とは、大いなる嘘を起点として、見る者それぞれの想像力によって拡大発展していく娯楽であるならば、この『アンドロメダ…』こそ映画的な映画といっていいだろう。末尾に「…」が入るタイトルも、これ以外見たことがない。
ジャンルはSFだが怪獣なんか出てこないし、赤ちゃんがらみといっても『トゥモロー・ワールド』みたく無精子社会を描いた終末感とは終末設定が違ってる。
宇宙から飛来した災厄という点、『宇宙戦争』と比肩できる映画ではある。未知の病原体ウイルスの恐怖が映画を見ているうちにどんどん増幅していき、このままではニューヨークもサンフランシスコも汚染されていくのではないか、世界は死に絶えるのではないかという恐怖が静かに進む。
目に見えた戦争や侵略がない分、『宇宙戦争』とは異質な作品。といってハッタリでもコケ脅しでもない。相手が病原菌だから「それもありか」と思ってしまうのだ。映像的作為というか、見せないでこれだけ怖がらせるのだからたいしたものだ。
あ、も一つ、原作はマイケル・クライトン、いわずと知れた『ジュラシック・パーク』の原作者その人でもある。