おなじ題名の、内容も甘ったるい別の映画もあるようだが、ここで紹介する方の『追想』はバイオレンスである、戦争映画である、しかもたった一人の男がナチの一個小隊くらいを相手に斗う一大復讐活劇である。
〈あふれる涙に照準を狂わすな!〉は、この映画の惹句だったのか!
1944年。戦争の暗い影が兆すフランスの小都市。町の病院に勤める外科医のジュリアン(フィリップ・ノワレ)は、美しい妻クララ(ロミー・シュナイダー)と娘にも恵まれ、幸せな家庭を築いていた。が、連合軍の上陸に備えるナチ・ドイツは全市町村を制圧下におくべく、掃討作戦を開始。妻子の身の上を案じたジュリアンは見に帰る。
だが、村には人っ子一人おらず、何気なく訪ねた教会で見たものは、射殺され、血を流した村人たちの無数の遺体だった。そしてナチの兵士がうろつく家の前では、射殺された娘の遺体と、妻は……!!
なんと、広場の塀にすがりついたまま静止した妻の姿は、黒焦げの焼死体だった。そばには火炎放射器が転がっていて、それから類推したことは、娘の死体に取りすがろうとしたクララを、ナチ兵士は薄ら笑いを浮かべて面白半分生きたまま焼き殺したのだった。
嗚咽を必死に噛み殺すジュリアン。
そして復讐の鬼になったジュリアンは、自宅に直結した古城を舞台に、地の利をわきまえた優位に立って、ナチの兵士を一人、また一人と銃で撃ち殺し、火炎放射器で焼き殺していくのだった。
いやー、素晴らしい!
「男の戦い、正にここにあり」という映画であり、射的のごとく確実に殺していく「マン・ハント映画」の最高傑作ではないか。最愛の者を失った哀しみ、あとはどうなってもいいという自暴自棄からの必殺決死の戦い。
アマゾンレビューに見る、「たった一人の個人が戦争プロのナチにかないっこない」「人の命を助ける医者のすることじゃない」などの批判。おまえら、バカか。妻や子を殺されて正常でいられるか。捨て鉢の怒りはナチにだって体当たりできるんだ。
溜飲映画の最高傑作ともいえるが、ただ、見終わったあとの虚無感もハンパじゃない。立ち向かえる余裕のある者だけ見てくれ!
いまなら中古でも719円からのようだ。
画像はトップシーンとラストシーンに使われた「家族写真」——