1980年公開。もう、何度見たかも知れない大傑作。6/200!
ちょっと見にはただの活劇——しかもハリウッド製B級アクションと思って見てしまうが、5分と経たないうちにハイ・テンションな展開とスタイリッシュな映像にどっぷりひたって身動きとれなくなる。
どこに「ベネチア映画祭グランプリ(金獅子賞)」の魅力があるのか、と、ひさしぶりの再見、目を皿にして見てしまった。
素晴らしい! そして、タイトルに書いたごとくカッコいい! 「カッコいい」とはどういうことかを映画にした初めての作品ではないだろうか。空前絶後。『グロリア』の前に『グロリア』はなく、『グロリア』の後にも『グロリア』はない。リメイクなど忘れてしまえ。この大傑作をリメイクしようという了見こそが大バカヤローだ。
ひょんなことからギャング同士のいざこざに巻き込まれ、もともと大嫌いな子供を預かるハメになり、そればかりか仲間からは「裏切り者」呼ばわりされて命をつけ狙われ、必死の追撃をかわしながらの逃避行。「邪魔する奴は容赦しないわよ!」と眼を剥き、銀色のコルトを躊躇なくぶっぱなす鉄火肌の一匹狼ヤクザ・グロリア——
と、書いてきて気づいた。『レオン』(リュック・ベッソン監督、1994年)は殺し屋がジャン・レノ男で、子供がナタリー・ポートマン女。なーんだ、設定をあべこべにしただけか、アホクサ。
監督のジョン・カサヴェテスってのは主演作も見たことあるが、その実の奥さんが主役を演ずるジーナ・ローランズ=グロリアだってんだから息が合ってるのもうなづける。あの黒澤明も「推薦する世界映画100本」に挙げてたとか。
映画はサウス・ブロンクスとかのごみごみした街のようすと、明らかに「その道の女=街娼」とおぼしき(少年の)母親が満員バスから吐き出され、降り立つ場面からはじまるが、女の存在感が強烈すぎて、見ているほうは早くも「何か始まるぞ」感で緊張の糸が締め付けられる。そして場面がグロリアに引き継がれるや、物語は怒濤の流れを見せる。少年とグロリアとの「突き放し感」と「寄り添い感」が、互いに緩衝し合いながら一分の隙もなく進行し、見ているほうもひりひりと締め付けられる。
最期には怒り・焦り・捨て鉢など、ありとあらゆる感情の爆発による「銃撃のカタルシス」が待ち受けている。見終わってみれば確かに、その後の凡百の映画に影響を与えグランプリ映画と呼ぶに相応しい傑作。『レオン』はとうに忘れたが、『レオン』がパクった本作の記憶は永遠に残り続ける!
余談:画像ではないが、じつは『グロリア』のDVDパッケージは2つある。
なぜか!(笑)
人に(まえのヘルパーに)『グロリア』を返してもらったら中からは『MUSA_武士』のディスクが出てきた。で、『MUSA』はなくしたものと思い込んで注文したあとなので、けっきょく2本になった。
だから、こないだ書いたんだ。
DVDはゼッタイ人になんか貸すなっ!