きのう見た『黒い福音』(ただし1984年の作品!)の感想を書こう。
うーん! 可もなく不可もなし、といったところか。もうすこし突っ込んでもらって「溜飲を下げたかった」、というのも「ないものねだり」か。第一、事件そのものが未解決のまま迷宮入りした「闇のなか」なのだから(笑)。
しかし、なぜだろう。19日放映のたけし主演の『黒い福音』と比較した時、30年前の作品の方に段違いの軍配を上げたくなるのはなぜだろう。それほど日本のドラマは廃れたということの証明にだけはなった。
『松本清張スペシャル・黒い福音』は、実に30年前、1984年11月26日21:02〜23:24(映像データによると正味2時間2分、民放の2時間番組のCM抜き時間が通常1時間半であることからすれば、この時間配分は良心的)の放映だった。TBS。
DVDをかけた時、まず白井佳夫の解説が出てきたのにも驚かされた。当時の社会状況。戦後の混乱も収まり、「もはや戦後は終わった」といわれる時代背景、皇太子妃の成婚、ミッチーブームの到来などなど、そのような中での外国人犯罪、しかも神父が犯人と目星を付けながら、時の政権の有力者の暗躍もあって高飛びされたという苦渋。それらが解説されたように思う。
そしてドラマはスタートするが、まずは片平なぎさが若い! 可愛い! あえて付け加えれば、殺害に至る場面でのセミ・ヌードが、かなりエロかったなあ(嬉)。あ、これ、TVドラマなんだよね。昔のドラマはヤバかったんだな(汗)。
もう、これだけで(笑)2時間が「あっ」という間だ、といったら大袈裟か(謝々々!)。とにかくヒロインの初々しさ、若さがこのドラマのキモだ。それゆえ、ドラマの進行につれて犯罪に対する憎しみ、犯行を断罪できなかった悔しさ、憤怒が見ていて倍加される。
ここには先日見たドラマになかった、「日本の女が殺されてるんだぞ!」という記者連中の怒りのセリフがちゃんと出てくる。それにしても、当時の日本の政権の中枢が——つまり自民党のクソ連中の親玉どもが、「たかが女ひとりのことで国益を損ねられない」と吐き棄て、事件を握りつぶしていたという事実こそ許しがたい巨悪である。
30年前のドラマ、『黒い福音』には、その全篇から日本の政治の真っ黒な現実が透かし見えてくる怒りのドラマといえるのではないか。
脚本新藤兼人、監督増村保造。制作は大映テレビとTBSに加え、ドラマ製作の6年前1978年設立の「霧プロダクション」。