こんど舶来もの映画(笑)を紹介するに、コーナー名を『日曜洋画劇場』にしようか、などと考えていた矢先、なんとその番組自体10月で終わる、というのだ。いや、『日曜洋画』の名前は残るようだが、くだらんバラエティとの「ごった」で有名無実、実質「終わる」ということで間違いないだろう。
それというのも、洋画劇場といいながら同枠で何回かやったバラエティが高視聴率だったとかで、「マジか」「ほんとかよ」という驚き以外表明するすべを知らない。けっきょく「当節テレビなんか見てる奴はバカばかり」ということだろう。そんな傾向が底上げしての高視聴率なら理屈には合ってる。
日曜洋画劇場といえば「さいなら、さいなら」で締めくくる名解説を連想するが、その淀長(ヨドチョー)さんも1998年11月、おなじ年の9月に亡くなった映画監督・黒澤明の後を追うように亡くなった。黒澤は淀川長治さんの親友とのことで、奇しくも最期の解説は黒澤のヒット作『用心棒』のリスペクト『ラストマン・スタンディング』であり、しかも解説収録が死の前日だったという。
淀長さんなき日曜洋画など気の抜けたビール、といったら言いすぎかも知れないが、番組本体としても、その後は「アラの目立つカット」や「作品のマンネリ化」など退潮化いちじるしかったとウィキペディアに書いてあるくらい、にらみの利かなくなった現場の惨憺だろう。
この日曜洋画劇場はもとは土曜洋画劇場と呼び、放送時間もいまの土曜ワイド劇場とおなじ、ではなく、正味70分から80分枠もあり、放送の全期間とおして2時間番組ではなかった。
そこでまた渥美清さんの登場となるわけだが(笑)、土曜ワイド劇場第一回作品は早坂暁脚本『時間(とき)よ、とまれ』だ。これが後につづく「田舎刑事シリーズ」の1本とのことだが、他の3作品(旅路の果て・まぼろしの特攻隊・「時間よ、とまれ」ワイド版)は見た記憶がない。
『時間よ、とまれ』は再放送したのが残ってる。小説も書く才媛・高橋洋子(『旅の重さ』のオールヌードによだれ!)(笑)との共演という傑作だが、これを友だちにあげるのにテレビシリーズ『泣いてたまるか』の一話とセットにしてDVDに焼いたものだ。
話の内容はこうだ。
刑事が休みの日に寝転がってテレビを見ている。ボクシングの中継で、偶然、映った観客席に時候間近の逃亡殺人犯の顔。「おい、おまえか!」と呼びかけ、カメラが切り替わってからは「もう一回出せ、出てこい!」と怒鳴り、テレビを叩くやら、局に電話して頓珍漢な要求を突きつけるやら。
多少くさい演出ながら、70分(1時間半枠のCM抜き正味時間)たっぷり濃縮されていてすこしも飽きさせない展開で、殺人逃亡犯(演ずるは若き日の小林桂樹。懐かしい!)を高橋と協力して追い詰めていく。
●参考リンク●●[ドラマティックに恋して]から
『時間よ、とまれ(ときよ、とまれ)1977』
もう一本付けた一時間ドラマ(正味45分超)も、人気シリーズ『泣いてたまるか』中の「雪の降る街に」と題した刑事ものだ。
それで思い出すのが野村芳太郎監督、松竹映画『八つ墓村』(上記とおなじ! 1977年製作)で、本作で渥美さん演じるは探偵・金田一耕助だが、どちらも「『寅さん』じゃない渥美清」という共通点においては印象深く、愛すべき好ましい作品となった。
「もっともっと寅さん以外の渥美清を見たかった」という俺の欲求は過大だろうか。
(画像は映画『八つ墓村』から渥美探偵とショーケン)