渥美清といえば『寅さん』、『男はつらいよ』のイメージが強烈すぎるが、シリーズ全部をとおして《国民的映画》化した感が強いのも偽らざる事実だ。
しかし、俺が企画したBOXでは『寅さん』を廃した、『男はつらいよ』をまったく無視した、渥美清主演の映画とドラマからアルバムを完成した。
まず、丸山誠治監督『父子草』(木下惠介脚本、1967年)を、ネットに上げられているもののリンクで紹介しよう。
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movie walker●●『父子草』
淡路恵子が屋台のおでん屋の女将に扮して、いい味を出している。《生きていた英霊》なんてことばが出てくるのも、本作の妙味だ。シベリヤ抑留の悲劇は幾多の映画で描かれ、古くは小林正樹監督『人間の條件』があまりに有名だが、木下忠司の余情切々たる曲に乗せた回想シーンにセリフはない。しかし、そこに出てくる佐渡は俺の生まれ故郷でもあり、佐渡おけさではない佐渡の民謡「相川音頭」を、寅さんでない渥美清がしっとり歌う点も本作の妙味だ。星由里子と石立鉄男の青春コンビもいい。電車の踏切の「チン、チン、チン」という音とおでんで『父子草』を思い出そう。
●●涙の名作動画リンク●ユーチューブ
『父子草 01』/
『2』/
『3』/
『4』/
『5』/
『6』/
『7』/
『8』/
最終『9』
●ユーチューブ●●土曜ワイド劇場第一回作品
『時間(とき)よ止まれ』2/6
なぜか、1/6が切れてるんですが……
『田舎刑事』というタイトルもあるので、ほかにもシリーズ作があったのかも知れない(脚本は早坂暁)。功成り名を遂げて出世した男の過去を暴く、というのには『飢餓海峡』(内田叶夢監督、1965年)という名作があるが、そこで三国連太郎が演じた「過去ある男」に当たる役を小林桂樹が好演してる。
また、本作で素晴らしいのは二人の女優演技。
まず渥美といっしょに捜査に当たる女刑事を、絶頂期の高橋洋子が演じてるが(熊井啓監督『サンダカン八番娼館 望郷』も忘れがたい!)、小説も書き、それを劇化して監督したりの「才媛」といわれるだけあって、演技にも頭の良さを感じられる。
もうひとり、年取ったストリッパー役で、若い日の市原悦子が見事な老け役演技を披露してる。皮肉にも仲良しだった小林桂樹の過去を暴く、表裏一体の微妙な役どころを絶妙の木訥さを再現させて、「名女優ここにあり!」を強烈に印象づけた。
もうひとつのドラマは『泣いてたまるか』だが、オススメの『雪の降る街を』(第33話)は、664円の中古が出ているので、イブに間に合わせて注文し、Xmasイブ当夜に家族といっしょに見て欲しい。とにかく心温まること間違いなし!
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渥美清の『泣いてたまるか』〜「雪の降る街に」「吹けよ春風」