弁護士高見沢響子(市原悦子)は、依頼人に裏切られ、「悪徳弁護士」の汚名を着てマスコミの集中砲火を浴びて、傷心を癒やす旅にでたものの、ひょんなことからひとりの老人の悩みを聴くことになった。
きっかけは雨宿りに立ち寄った本屋。たまたま頼まれた電話番ででた電話の相手は、くたびれた感じの老爺(米倉斉加年=画像)だった。
「詩のことを訊ねたいのですが……『もはや、できあいの、思想には、倚りかかりたくない。もはや、できあいの……」
ああ、と響子は思いあたった。
「それ、茨木のり子さんの詩ですよ」
それから話が弾んで、出逢いがおとずれ、好きな釣りで仕留めた立派なシマダイを手土産に、茨木のり子詩集を求めに本屋の店先を訪れた。
「詩はお好きなんですか?」
「いいえ! わたしなんかバカな者、釣りと将棋くらいしか。詩集なんかこの歳になるまで……屋台で呑んでて有線でながれたこの詩に、感動、しましてね」
そういって好みの部分を指で示して、
「『じぶんの耳目、じぶんの二本足のみで立っていて、なに不都合のことやある』、この部分が良くてね!」
そういって頬ずりするくらいなのだ(10月17日TBS放映『弁護士高見沢響子11 夢の花』より)。
[『倚りかからず』 茨木のり子
もはや
できあいの思想には倚りかかりたくない
もはや
できあいの宗教には倚りかかりたくない
もはや
できあいの学問には倚りかかりたくない
もはや
いかなる権威にも倚りかかりたくない
ながく生きて
心底学んだのはそれぐらい
じぶんの耳目
じぶんの二本足のみで立っていて
なに不都合のことやある
倚りかかるとすれば
それは
椅子の背もたれだけ
ある時、老人はぽつりといった。
「人は、倚りかからねばいきてはいけません。倚りかからないなんて、とんでもない!」
きっぱりと言い切った時、老人のそばには、老人に親しそうにまとわりついてきて、取り憑いた、老人の孫娘だといった若い娘と、自分が殺そうとした息子に面影がよく似たひ孫の男の子がいた。
ここのところ失望させられることが多かったが、まだまだ! まずは竹山洋の才気復活に声援を送る。
いいドラマには会いたい人が生きている。
市原悦子、あめくみちこはもちろん、米倉斉加年、(アリコのCM出演にはがっかりしたが)平泉成、そして京野ことみはこのドラマを機にじっくりとその演技をみせられた。ちなみに演出も名作の多い堀川とんこう。
もう5回見ちゃった(笑)!
創作の基本についてもつづる竹山洋論は、後日!